大正〜昭和初期の小説家で、新感覚派の旗手として知られる横光利一の短篇小説。初出は「文藝春秋」[1923(大正12)年]。真夏の空虚な場庭に、息子の危篤に間に合うように急ぐ農婦、駆け落ちの若者と娘、母親と男の子、田舎紳士等が馬車に乗るために集まった。しかし蒸し立ての饅頭を食べることを習慣としている猫背の馭者は、なかなか出発しようとしなかった。やがて出発するが、饅頭をことごとく食べてしまった馭者は途中で居眠りをし、馬車は乗客もろとも崖から転落する。馬車で羽根を休めていた蠅だけが青空に悠々と飛んでいった。